Close-up of two colorful kingfishers perched together in nature.

配偶者の呼びかたについて

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あなたは、ご自分または他のかたの配偶者やパートナーのかたを、どう呼んでいますか? 今の日本では、「旦那/嫁」、「うちの/カミさん」、「旦那さん」「ご主人」、「奥さん」「奥様」などが一般的でしょうか。

こうした呼びかたは、現代においては、単に自分もしくは他者の配偶者をさししめす用語にすぎなかったり、ときに会話のなかで敬称のように使われているのであったりするでしょう。一方、ことばの成り立ちとしては、上下や手前・奥といった関係性に起因するものもあり、その陰影はもはや完全にふり払われている、とはいいがたいでしょう。そのため、配偶者をどう呼ぶかについては、実は何十年も前から議論や変遷があります。かといって、それ以外の適切な呼称が生まれていないのが現実かと思います。

当オフィスでは、カウンセリング・心理療法をはじめ、その他の場面にて、クライエントのみなさまの配偶者のかたに言及する必要があるときは、一律「夫さん」「妻さん」、あるいは「夫さま」「妻さま」と呼ばせていただくことにしています。

これらは、市民権を得てはいない、今後得るかどうかもわからない、微妙な(というか、ちょっと奇妙な)呼びかたですが、今のところ、相手のかたとの関係性をひとつの属性としてあらわすにあたって、一番シンプルでフラットな呼称のように思うからです。「夫さん」「妻さん」呼びは、現時点での私の考えということでご了承いただけますと幸いです。

私がそうしようと思うのと同様に、クライエントのみなさまご自身が、どういうふうにご自分の配偶者のことを呼びあらわされるかはまったく自由です。世の中の妻さんが「うちの旦那」と言うとき、そこに、夫婦のポップな関係性や対等な力づよさが感じられることもありますし、だいじなのはどう呼ぶかではない、という議論もあるでしょう。

私の「夫さん」「妻さん」呼びは、セラピストがクライエントさまにともなう関係性にふれる場合には、やはりデリケートなあつかいが必要ではないか、という考えによります。ある人は、内心では抵抗があっても、ほかに言いようがないから「主人が」と言っているのかもしれません。たとえばそういうときに、私がそのかたの口ぶりを慣習的、自動的になぞって、「ご主人が」などと言うことは、はたしてそのかたの本当のお気持ちをおさえつけることにならないだろうか。悪意なく、しかしやんわりと。そんなことを考えるので、できるだけ他の意味をまとわない「夫さん」「妻さん」呼びを採用しています。

ちなみに、もしクライエントさまが、「連れ合い」「パートナー」「相方」など、フラットな表現でお相手をお呼びの場合は、私もそれに準じて「連れ合いさん」「パートナーさん」「相方さん」と呼ばせていただくことになるかと思います。

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